交渉

交渉の基本


企業や役所を相手にするときは、
「あらゆる行動を記録しろ。数字をメモしろ。ノートにまとめて、それを交渉の席に持参しろ」


名人の言葉


恐らくは「名人」には、「嘘」や「誇張」も混じっているのだろうし、「証人の○○さん」だって、下手するとその場で適当に思いだした名前なのかもしれない。それでも「○○さん」が証言を否定すれば、「○○は嘘をついた」と叫べばいいんだし、そのとき同席した人が確認をしなかったなら、今度は同席した人たちの怠惰を責めればいい。いずれにしても、名人は絶対損しない。


交渉の手順


1. 相手の「サービス」に、あれこれと難癖をつけてみたり、自己流を通したり、状況をできうる限り複雑にする
2. 付き合いきれなくなった相手が、「要するに」で何かを省略したその瞬間をめざとく記録しておく
3. その人がいない場所で、権威を持った別の誰かと親しく語り、「ここにいない誰か」の不作為や不義を訴える
4. それを否定すれば、自分たちの手落ちだから「交換条件」を引っ張れるし、それを傾聴すれば、今度はたぶん、「これ聞いたよね。その時否定しなかったよね」なんて、言質をとれる
5. たくさん作った「証言」や「証拠」は、裁判一歩手前の状況なんかで、交渉のテーブルに山と積まれて、相手を不利な立場に追い込む武器になる


農作業


こういうのはたぶん、状況を耕して、言葉を蒔いて、証拠や言質を収穫する、どこか農作業に似た営みであって、「耕される」側がどう突っぱねようと、こういうやりかたの上手な人には、あんまり関係ないような気がする。


「証拠と結びついた言葉」が、交渉の貨幣になる。


いざ交渉に臨めば、その人はだから、ものすごい量の貨幣をテーブルに積めることになる。身の回りに起きたあらゆることを記録していたところで、「普通の人」に提出できる貨幣の量なんてたかがしれていて、呼吸するように、何もないところから無尽蔵に交渉の貨幣を生める、こういうプロの人たちには、原理的には絶対勝てない。


そこに居合わせた法律の人たちが、貨幣の「質」を吟味してくれるのを祈るしかないんだけれど、それがきちんとできるなら、そもそも法律なんていらない。


交渉の名人が来た