虚構の中に真実を求める社会

日本社会では、虚構を維持するコストが極めて安い。しかも、今まで依拠してきた虚構がダメとなった場合でも、いとも簡単に別の虚構へと乗り換えることができる。その低コストを実現している秘密が「空気」である。


日本では、どう考えても無理があるというような虚構でも、皆が「見て見ぬふりをする」ことで虚構が維持される。その維持のために、「それは虚構だ」と指摘するような者を「空気を読めないやつ」として排除する機構が働いている。
そしてこの空気は、何かきっかけがありさえすれば即座に一変する。明治維新や戦後復興に成功したのもそのお陰だろう。ただし空気の変化には、現実としてのきっかけが必要である。きっかけとは多くの場合「痛い目に遭う」ことを指す。黒船や敗戦などがそれに該当する。


虚構だけで生きていけるほど現実世界が甘くないため、日本社会は、建前と本音という二重構造を用意し、建前として虚構を維持する一方で、本音によって現実への対処を行っている。あからさまに本音を口に出すと虚構を崩してしまうため、日本人は本音をはっきり口に出すことを好まない。そこで、相手の建前の言から行間を読み取って本音としてうまく対処する(ただし対処する側も表向きは建前を通し続ける)ことが日本人には求められる。これも「空気を読む」と言われる行為の一つである。


プライバシーと空気