時を巻き戻せない理由

エントロピー[物質や熱の拡散の程度を表すパラメーター]をわずかに増大させるような何かを行なうとする[部屋を散らかすという意味]。そして観察者は、その行為の結果を観察し、それにより生じたエントロピーの増大を記録する


エントロピーを元の低い値に戻せる一連の手順を選択できるとする。ただしそうするには、自分の行為を元に戻すだけでなく、すべての相関系を元に戻す必要がある。つまり、起こった出来事とそれを記録したことに関する観察者の記憶も消し去らなければならないわけだ。観察者が記録を紙に書きとめていたのなら、それも消して白紙に戻さなければならない。しかし、このように作業を続けていけば、最終的にはその出来事が実際に起こったという記録はどこにも存在しなくなるはずだ。


不可逆性の原因


要するに、エントロピーを減少させる出来事は起こり得るが、それを「系の中から観察する」のは不可能というわけだ。この理屈を、おそらくは1つの閉鎖系であるはずの宇宙全体に当てはめることもできる。宇宙全体のエントロピーを減少させることは可能であっても、われわれはその系の中にいるため、そのような出来事を自ら観察することはけっしてできない、というのだ。


時間


時間が1つの方向に流れることは、記録が保存され、出来事が観察されることを可能にする。しかし、流れる方向が逆になると観察することはできない。したがって、時間は2つの方向のどちらにも流れ得るが、あらゆる観察者にとって、時間を経験するということは、時間が未来へ向かって流れている場合にのみ可能となるのだ。


時はなぜ一方向なのか:観察者問題から説明